水のたまゆら

世界はゆっくりと水に沈んでいった。

人々も世界がゆっくりと水に沈んでいることは認識していた。 認識していたからこそ、人々はゆっくりと、そんな世界に適応していった。

ビルが1階から沈みゆくのであれば、上へ上へと居を移せばいい。 低い土地が沈むのであれば、高い土地へと居を移せばいい。 そして、あまりにもゆっくりだったから、人々は、今までの住まいのまま、水の下で住まう技術も、作ることができた。

水の上へ、下へ。 人々は分かれて暮らした。

水の下はしっかりとインフラが整備されている。 水の上よりもお金が必要だが、あれこれ機械があり、人がいる分、仕事も多い。

水の上は打ち捨てられたような生活だ。 それでもここには日光があり、空気がある。

どちらが良い、などない。 どちらだって昔とは違う。 どちらかを選ぶしかない。

これはそんな世界で暮らす、人々の話。