とある雨の日
薄暗い部屋、ソファの上、少年は薄手のブランケットを頭から被っていた。視線は窓の外、雨模様。
二階建ての最上階のこの部屋では、雨音がとんとんとん、屋根に落ちる音が聞こえている。
「どうしたの」
少年に問いかける。彼は普段からアンニュイだが、こんな頭からブランケットを被るようなことはしない。
「雨が好きじゃないんだ」
雨模様の窓から目を逸らさずに彼は言う。窓にはカーテンはついている。
なぜ、と思ったが、知りたい答えは得られないとわかっていたので、やめた。
「ココアでも飲む?」
追及の代わりに、情愛を。
自分が彼にできるのは、そのくらいだと思うから。
「コーヒーがいい」
「寝れなくなるよ」
「眠りたくないんだ」
わかった。そう答えて、部屋を後にする。
好きでは無い雨の音なんて聞かず、
はやく眠ってしまえばいいのに。
そうは思ったが、きっと、彼なりの向き合い方で、彼なりの懐古で、彼なりの憧憬で 、彼なりの贖罪なのだろうと、思うことにした。
キッチンでひとり、湯を沸かす。
もし俺が彼に、ひとりはきらいなんだと彼に告げたら、彼はここに一緒に立ってくれているだろうか、なんて考えながら。