泣いていいのは、私ではない。
あなたはあまりにもあっけなく、いってしまった。
もっとできることはなかっただろうか。私は、精一杯、手を尽くせていただろうか。あなたのために、何かを、何かをしているつもりだった。精一杯だったように思う。でもそれは正しかったのだろうか。私のやったことは、ほんとうに、あなたのためだったのだろうか。
痛い。
ああきっと、あなたはこの何倍も、ずっとずっと痛かった。私は不足だった。それはわかっている。あなたがここにいないこと、それがその証明だ。私は私にとってのできる限りを、やった、そう思いたい。だけれども、世界は、この世界は、あまりにも冷たく厳しく残酷で。私だけでは、あなたを世界から守り切れなかった。
ああ、あなたを傷つける世界なんて、壊れてしまえばいいのに。あなたがいない今、もう、そんなことを考えても、願っても、思っても、希っても、まったくもって、いみがないのだけれど、でも、でも、願わずには、思わずには、いられないのだ。ねえ、どうして、あなたがいないの?どうして、あなたのうつくしい、ささやかな、ちいさな平穏すら、守れなかったの?どうして、あなたのささやかな平穏を害する人たちは、いまも、この世界で、笑って暮らしているの?
ああ、泣いていいのは私ではない。私は、泣いてはいけない。
あなたはもっとずっと痛かった。
あなたを守れなかった私は、泣くべきではない。
誰が許そうとも、私が許さない。