龍と新年

龍は子を成さない。代わりに龍は、龍の素質のある者を子として、龍に育てる。

モモとスイは、同じ龍に育てられた姉妹だ。明るく行動的なモモ。賢く冷静沈着なスイ。一見対照的な2人は、龍から贈られた黄金の瞳を持っている。

龍は子と認めた者に、力を与える。龍の子の瞳は、龍の力の影響で、親と同じ色に変化する。元々他人であるモモとスイにとって、同じ色の瞳だけが、姉妹の証なのだ。

「ねえ、モモ」
「どうしたの、スイ」
「不安だよ」

来年は12年に1度の龍の年。龍の年には、龍は地上に降りて、人々を見守るお役目がある。モモとスイも親に付き添って地上に降りなければならない。

「スイは心配性だね」
「モモは心配じゃないの?」
「だって、何回もやったでしょう?」
「そうだけど、」
「大丈夫だよ。龍神様もいるし、隣に私もいるんだから」

モモはぎゅ、とスイの手を握った。

「そっか。そうだよね」

スイもモモの手を握り返す。

「そうだよ。いつかはひとりだちしないといけないけど…………今はまだ、ふたりでいようね」

モモがそう言うと、スイもこくりと頷いた。そしてふたりは手をつないで、一歩を踏み出す。

次の1年を見守るために。

トップに戻る